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2008.07.25 Friday * | - | - | -
* 7:リサイ
 翌日は安息日だった。学問所も仕事も休みだ。リウはイナの様子を見に行った。
 イナは家の裏手でまき割りをしていた。
「大丈夫なのか?」
「ああ、まき割りが溜まってたから昨日も休んだついでに少しやってたんだ。ケガはたいしたことない。」
 一見か細く見えるイナだが、案外とたくましい。
 切り株に腰を下ろして、イナはひと休みした。リウもそばに座り込んだ。
「カリフ先生っていい先生だな。」
 リウがつぶやくと、イナもうなずいた。
 だが、カリフが人を殺したことがあるということは、イナにも告げられなかった。おそらく、リウに言ってくれたことだから。本来は人に言わないことなんだという気がした。
「もうすぐ夏至祭だ。」
 イナが言った。
「ああ。」
「カリフ先生が弓と竜笛を披露して司祭宮に奉納するそうだ。」
「へえ。先生は今まで街で見なかったけど、どこから来たんだろう。」
「海の方のタスチフのあたりからだって聞いたよ。オーネンのつてらしい。」
「詳しいな。」
「母さんから聞いた。」
「ああ、叔母さんは情報通だ。」

 ひと月もすると夏至祭の前夜祭だ。
 この晩は大人も子供も無礼講で、遅くまで街に繰り出す。
 リウもイナもサリも、小使い銭をにぎりしめてにぎやかな街の出店を見て回った。
 井戸噴水のある、骨董街の四ツ辻まで来て、リウははっと立ち止まった。
 向こうから来るのはリサイ達だ。
 それだけではなく、その後ろから笑顔を浮かべて歩いてくるのはカリフだ。
(どういうことだ?リサイ達と・・。)
 とっさに出店の陰に隠れた。
 イナとサリもつられたように隠れた。
 だが、通り過ぎようとするかに思われたカリフが、まっすぐ前を向いたまま、リウ達に声をかけた。
「一緒においで。3人とも。」
 ちゅうちょしたが、イナが目配せするので、仕方なくカリフ達のあとをついていく格好になった。
 時々リサイが振り返るが、その顔には今までのあからさまな敵意は浮かんでいない。
 司祭宮前の広場まできて、カリフはみんなに腰を下ろすように言い、マントのポケットから紙包みを出して、その中身をみんなに配った。口に含むと甘酸っぱいアカシの実のお菓子だった。
「ケンカの始まりはリサイにも聞いた。ずっとにらみあってきたこともね。リウにも言い分はいくらでもあるだろう。だが、司祭宮の広場で水に流さないか?」
「オレは知らない。リサイに聞いてくれ。」
「リサイはそうすると言っている。」
 リウとイナとサリは顔を見合わせた。
「なんで?」
 信じられないというようにリウはつぶやいた。
「カリフがそうしろというなら、オレはそうする。」
 リサイが初めて見るような真面目な顔をしてそう言った。
 どうしてかは分からないが、リサイはカリフのことを心底信頼しているように見えた。
 リウは毒気を抜かれたようにあっけにとられて言葉がしばし出なかったが、イナに肘でこづかれてやっと返事した。
「分かった。じゃあ、オレもそうする。」
「司祭宮の広場で祭りの前夜、アカシの実を食べたものはもう友だ。いいな。」
 そういって立ち上がると、カリフは笑って明るく手を振って、去っていった。
 リウは聞いた。
「どうしてカリフの言うことなら聞くんだ?」
 リサイは答えた。
「カリフはオレ達のことを初めて分かってくれた大人だ。だから裏切らない。じゃあな。」
 そういってリサイ達は祭りの人混みに消えていった。
 リウはカリフの不思議な力を感じていた。それは、力づくではなく人の心を掴む明るい力だった。
 それはカリフの過酷な闇が培ったものなのだろうか?
2006.08.01 Tuesday * 13:35 | Story | comments(0) | trackbacks(0)
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