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2008.07.25 Friday * | - | - | -
* 50:玉石鉱
 リウがもどるとイハンはテーブルの上にのせられた箱からひとつひとつ鉱石を取り出して真剣に眺めていた。
 その横顔は昔の父さんのままだ。
 リウはお茶を入れた。
「根をつめると疲れるから。お茶を飲んで。」
 イハンは顏を上げて、リウとお茶を見た。
「ああ。おまえが入れるお茶は旨い。なんといったか?おまえは。」
 リウは何回も繰返してきた名前をもう一度そっと唱えた。
「リウだ。」
「そうか。」
 ただそれだけ言ってイハンは目を鉱石にもどして淡々とお茶を飲む。
 そこへアルが飛び込んできた。
「奥へ行け!エケネンたちが来た!」
 リウはうなずいてイハンの腕を取って立ち上がらせた。
「奥に坑道がある。そこまで行って坑道番にかくまってもらえ。」
 リウは覆面をしてマントをはおり、イハンとともに奥へと急いだ。

 谷の物見がエケネンの言伝をホズに持って来た。
『玉石鉱の出どころを渡せ。鉱石師もだ。さもなくば崖の上でたいまつ玉を焚いている手下が集落に火を落とす。谷を蒸し焼きにしてやる。』
「北の峯はくれてやると言え。鉱石師はいないと言うんだ。」
「エケネンは北の峯は要らないと言ってます。玉石鉱があそこにないことを知っているようです。」
 ホズは舌打ちして集落の者たちに声を張り上げた。
「坑道に行け!火が来るぞ!」

 谷のどんづまりにある坑道にたどり着くと、坑道番は奥へ案内し、今はふさいでいる古い坑道をふたしている岩をどけた。
「この奥でふたまたになっているが右へ行け。そして地下水の川を渡ってすぐの左の壁に登る足掛かりがある。ほとんどわからないから気をつけろ。そこを登ると壁に人ひとりが這っていける横穴がある。その奥がひらけている。食料もある。そこならしばらく身を隠せる。」
「わかった。ありがとう。」
 イハンの目はおびえていた。
「わたしは殺されるのか?」
「そうじゃない。助けてもらえるんだ。行こう。」
 坑道番の言う通り川を越し、イハンの尻を押して壁をよじ登った。
 思ったより広い空間が開けていた。内宮くらいある。空気も通っている。
 リウたちはそこに息をひそめた。

 ホズたちが奥へと走る後ろで火の手が上がった。
 だが、それはすぐに消し止められ、黒煙の後ろからエケネンの手下どもが追って来た。
 矢が飛び、剣が交わる音が響く。
 かろうじてかいくぐったホズやエサたちは坑道の手前で応戦した。
 だが次々襲いかかる手下たちにみるみる打ち倒され、次第に後退させられていった。
 ダルやリサイたちが谷の者たちを倒していく。
 ケニがアルを捕らえた。
 最後に手下どもの間からエケネンが現れた。
 エケネンはアルの首に剣を押し当てると、問うた。
「この奥が坑道だな?ここに玉石鉱の鉱脈が出そうなのか?」
 アルが押し黙るとエケネンはアルの腕に斬りつけた。
 アルは絶叫した。
「次は首だ。坑道番はどこだ?鉱石師はどこにいる?」
 アルは切られていない方の手で坑道を指した。
 ホズとエサも切られてうめいていた。
 谷の者で立っているものは捕らえられた坑道番以外そこにいなくなった。

 イハンがそこに転がっていた石を拾い上げた。息がせわしなくなり、あたりを見回し、壁をたたいた。
「火をくれ。」
 リウがたいまつを近づけると、石をそれにかざした。火に浮かび上がるイハンの顔が歓喜にはじけた。
「間違いない。」
「どうしたんだ?」
「これは玉石鉱だ。」
「えっ?玉石って・・。内宮にあった玉の原石か?でもここは廃坑になった古い坑道じゃないのか?玉石鉱はもう古くになくなったと学問所できいた。」
「閃光岩が出たんでもう一度ホズたちはここを探していたんだ。玉石鉱は閃光岩のそばにある。見てごらん。そこに厚い層があるだろう。そこは天井だったんだ。岩盤が落ちたんだよ。そこに隠れていたんだ。昔はあとわずかのところでここはあきらめたんだろう。だが、これはいい玉になる石だ。」
 イハンはまるで以前のイハンのようになめらかにしゃべった。鉱石師魂に火がついたのだ。
「エケネンはそれを狙うだろうな。」
 リウはつぶやいた。
「だれだ?それは?」
「この世界を牛耳ろうとしてるんだ。オレたちが隠れたのもそいつから逃れるためだ。」
「だめだ。これは牛耳るためにあるんじゃない。この石は鉱石師なら一度は拝みたいものだが、汚してはいけないものだ。」
「だが、とうさ・・サムス、オレは玉石をエケネンに渡してしまった。しかもとびきりの、内宮の中心の・・。」
「それはおまえが金のためにやったのか?」
「違う。ただ、最後の心が知りたかったんだ・・。」
「・・最後の心を知るためにあるんだよ。玉石は。」
「最後の心はわかったか?」
 エケネンの低い声が壁に響いた。
2006.09.14 Thursday * 13:49 | Story | comments(0) | trackbacks(0)
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