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2008.07.25 Friday * | - | - | -
* 47:サムス
 レモは遺跡に着くと、熱を出した。
「買ったのがオレたちでよかったな。」
 ラグは安堵の息をついた。
 レモが弱々しい息の下、口を開いた。
「エケネンは鉱山を・・手に入れるつもりだって。そうダルたちが言ってた。そうなったらこわいものがないって、どういうこと?」
「鉱山?」
「なるほど、鉱山があればちまちま強盗を繰返さなくともいい。」
 ラグが合点して相づちを打った。
「ほんとうに世界を牛耳るつもりだな。」
 リウはため息をついた。
「おい。おまえの父さんはエケネンに見つかるとまずいんじゃないか?利用されるぞ。」
 イルはリウに面と向かうと眉を寄せた。
 リウは吐いた息を飲み込んだ。
「今から谷に行く。」

 リウはすぐさま谷へとんぼ返りした。
 今度はひとりで来るしかなかった。ラグたちは『人買い』なので一緒に来るわけにはいかない。
 ラグはやはり心配になって止めたが、イルは背中を押した。
「後悔するよりはいい。道はきっとある。」
 狭い崖合いを行って、同じところで物見に止められた。
「なんだ、またおまえか。また逃げてきやがったのか?」
「ああ。お願いだ。崖からの落ちびとに会わせてくれ。」
「なんだって?」
「あきらめがわるいね。よせというのに。」
 綱を伝って降りてきたのは、あの髪の短い女だった。
「エサ。なんのことだ?」
「しつこいやつだ。サムスが自分の父親だと言ってる。会わせてやるよ。そしたらあきらめるだろ。あまりおまえに長居されちゃあ迷惑なんだ。おまえはあたしたちの客の商品だ。あたしたちがかくまっていると思われちゃこっちの信用にかかわる。納得したらここから消えろ。」
「わかった。」
 リウはエケネンたちを警戒してマントを深くかぶり直した。
 エサはリウをいったん崖の外へ連れ出した。そしてしばらく崖の淵を廻ってまるで入り江のようになっている岩影に案内した。
「サムスはここにいる。」
そこには木造りの小さな扉があって、エサはそれを押し開けた。
「サムス。客だ。」
 見覚えのある部屋だった。
(夢じゃなかった・・。)
 サムスと呼ばれた男はこっちを見たが、何の反応もなかった。
「父さん!!やっぱり父さんじゃないか!リウだ。」
「だれだ?」
 男は淡々とした声を発した。
 エサが言った。
「無駄だって言ったろ?おまえのことなんかわからない。サムスがわかるのは鉱石のことだけだ。自分のことはなんにも覚えちゃいないんだ。」
「かあさんは地滑りで兄のくににいる。うちは捨てて来た。銀の角ヤギもみんな放してきた。オレは7年前と随分変わっただろう?顏はこんなになっちまった。でもこの紅い髪を見てくれ!それにこの間一度助けてくれようとしたろ?砂嵐の時。それは覚えてるか?」
 サムスは目を見開いて、油汗を垂らし始めた。
「よせ。それ以上言うと発作が起きる。」
「発作?」
 突然、うおおおおーーー!と獣のような声を上げてサムスと呼ばれているイハンは殴りかかってきた。
 エサはリウの手をつかむと扉の外へ飛び出し、外からかんぬきをかけた。
「・・どういうことだ?」
「思い出せないから爆発するんだ。あまり追い詰めるんじゃない。自分のことを聞かれなければ最近はあまり暴れないんだ。ああなってもおまえは父さんと思うのか?」
「父さんだ・・。」
 そう言ってリウはそこに座り込んだ。
「おまえがここに居座ることは許さない。サムスを連れていくこともだ。これだけの鉱石の目利きはいないんだ。あたしたちが大事に世話してやる。向こうはおまえのことがわからないんだ。あきらめろ。」
「エケネンが鉱山を狙ってる。」
「えっ?」
「いずれここにも来るぞ。鉱石師がいなきゃお宝のありかはわからないんだ。父さんは狙われる。」
 エサは舌打ちをした。
「それでさっききたやつらは鉱山のことを根掘り葉掘り聞いてったのか・・。」
「さっき?」
「子供を売りにきたやつらだ。」
「ダルたちだな。」
 エサはきびすを返すと谷の入り口へ走った。リウもそれを追った。
 走りながらリウは問うた。
「鉱山はここから遠い北の峯なんだろ?」
「よく知ってるな。」
「なぜ父さんをここへ置いてる?」
 エサは走る速度を緩めてリウを振り返って鼻で少し笑った。
「おまえはカンがいいな。」
 物見に手を上げてさらに奥へと走った。集落には覆面の男がいた。
「ホズ!エケネンが鉱山に目をつけた。」
「ふん。なるほどな。遅いくらいだ。おい、そいつは?」
「やっぱりサムスの娘らしい。また逃げてきやがった。」
「サムスじゃないイハンだ。」
「だそうだ。エケネンの話はどこから?」
 エサがうながした。
「さっき人買いに売られてきた子供が言ってた。エケネンの手下がそう言ってたと。オレは髪を切って染めて覆面をする。人買いに見つからないようにするからここに置いてくれ。父さんのそばにいたい。」
「エサ、おまえが面倒見ろ。」
 ホズはそう言うと、それどころではないという風情で口笛を吹いて仲間を集めた。
「アル、サムスを連れてこい。谷にかくまうんだ。」
「でも・・。」
アルと呼ばれた横柄だった若者が渋った。
「少々暴れてもいい。何人かで行け!」
「暴れる?」
 リウはエサを見た。
「谷に置くと落ちたのを思い出してよく発作を起こした。だから外へ置いてたんだ。だが、しかたない。エケネンに渡すわけにはいかない。あたしたちにとっても稼ぎ頭だからね。おまえ娘なら面倒みな。刺激はするんじゃないよ。」
「わかった。」
 ホズは仲間たちに指図を始めた。
 エサはリウを集落の洞くつのひとつに案内した。
「髪を切ってやる。」
「何か染めるものはあるか?」
「暗夜鉱石の粉末がある。あれなら染まるだろう。赤髪なら赤紫がかった紺になるな。」
 リウはカリフを思い出した。カリフの群青色の髪は風になびくと輝いてきれいだった。
2006.09.11 Monday * 12:20 | Story | comments(0) | trackbacks(0)
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