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2008.07.25 Friday * | - | - | -
* 45:人買い
「リウ!このスウプおいしい!」
 サリが歓声を上げた。
「そうか?材料がないからな。ほんとうはもっとうまいんだぞ。」
「驚いたな。料理なんてろくにやらなかったのによ。随分仕込まれて帰ってきたじゃねえか?」
「そうだろ?」
 リウは努めて笑った。
「扉も壊されたし、遺跡もあんなになったせいかな、森とつながれなくなってな。今このあたりをいろいろ見て廻ってる。オアシスに少しは食料になりそうなものもある。それからイフー山の崖の方にもどうやら人が住んでるらしい。」
「イフー山の崖?」
「ああ、街からは下りれないだろう?砂漠からは行けるそうなんだ。オアシスで会った商人から聞いたんだがな、そのあたりのやつらがどうやら人買いもしてるらしいぜ。」
「だったらエケネンはそいつらにレモを売るかもしれないな。」
 イルが言った。
「そいつらに近づこう。」
 リウはうなずいた。

「この方向だと聞いたんだが。」
 ラグは手をかざして日差しを除けながら遠方に目を細める。
「そばまで行ってみよう。遠くからは入り口が分からないと言っていた。」
 イルがうながした。
 遺跡から砂漠を東に横断すると、ペキニの街を取り囲む山塊の壁に突き当たる。
 その中のひとつがイフー山だ。
 商人の話によると屏風をずらしたような小さな割れ目のような入り口があり、そこを奥へ辿るとイフー山の谷底にも通じるということだった。
 そこは地滑り前から闇の商人が根城にしていたところで、その頃、街の者でそれを知っているものはやはり闇に通じるごく一部の者だけだったらしい。
 二手に別れて崖の裾を探索し出してしばらく経った頃、イルの口笛が高く鳴った。
「あっちだ。行くぞ!」
 リウはサリを呼んだ。
「ほんとうにここなのか?」
「そうに違いない。いかにもそうじゃなさそうなところがな。」
 そこは人ひとりやっと通れるくらいの幅の岩の割れ目のようなものだった。
「暗いぞ、通じてるのか?」
「中で折れ曲がってるんだ。だが、ずっとつづいてる。」
「狭いな。ラグの腹は通れるのか?」
 リウが少し笑いを含んで言った。
「ばかやろう!先まで見てきたのはおれだ。」
 ラグは苦笑しつつ答えた。
「いくぞ。」
 ラグのいう通り、鋭角に折れ曲がり、入り口は天井に岩があるせいで光が差さないが、2、300歩も歩いたらすぐに明るくなって表へ出た。
 表とはいっても両側は切り立った崖なので空ははるかかなただ。
「こんなところがあったんだな。」
「ああ。知らなかった。」
(知っていればすぐに来たのに・・。)
 リウは奥歯をかんだ。
 イハンが落ちたところまでも通じているのかもしれない。
(もう7年だ。)
 だが、リウは思い出していた。
(オレが砂漠で迷った時、崖を見た。夢だと思ったが、もしかして・・。)

 行けども行けどもその先が見えなかった。
 相変わらず景色は絶壁と空だけ。
「こんなところに人が住めるのか?」
「だが、これだけ奥へ通じているんだ。どこかに行き着くだろう。間違いない。商人が言っていたのはここだ。」
「よく教えてくれたな。」
「お宝をつかませてやったのよ。」
「なんだ?」
「燭台だ。」
「えっ?あれはオレが壁にたたきつけて・・。」
「やつらが来る前におれが拾って森に隠しておいた。なんかの時に使えると思ってよ。今度もそれだけは持って逃げた。それで随分食料も調達できた。少々ぶっ壊れてても、高く売れる。あれはシリンで出来てる。」
 そう言ってラグはウインクした。
 リウは苦笑して言った。
「頼りになるな。」

「見ろ!その先は少しひらけてるみたいだぞ!」
 イルが声を上げた。
 遺跡のらせんの広間くらいの大きさの空間に出た。
 そのとたん頬をかすめて矢を射られた。
 シュルシュルと音がして、幾本かの綱を伝って上の方から人が何人か降りて来た。
 逃げようとした後ろは柵が落とされて、リウたちはそこで身動きがとれなくなってしまった。
「誰だ?」
 覆面をした男がラグに問うた。
「わしは西から商売に来た。子供を調達にきたんだ。このくらいのガキがもうひとり欲しい。いないか?」
 ラグはサリの頭を乱暴に揺すった。
「今ちょうど切れてるが、そのうち入るだろう。待つか?金はあるんだろうな?」
「ああ。商品が手に入ったらオレの息子に取ってこさせる。今巻き上げられちゃあ元もこもねえ。」
 覆面の男は鼻を鳴らして笑うと、仲間に言った。
「ご案内しろ。」
 ラグたちは崖にうがたれた洞くつのひとつに案内された。案内した若い男は横柄に言った。
「水は湧き水がある。煮炊きは勝手にしろ。奥へと勝手に歩き回るな。お前たちは見張られている。妙なまねをすれば生きて出られると思うな。」
「へいへい。とんだご歓迎で。」
 男が去ると、サリは口をとがらせてつぶやいた。
「ぼくは商品?」
「気にするな。その方が怪しまれないだろ?リウも商品ってことにする。」
「なるほどな。だけど、金はあるのか?」
 リウは気になって聞いた。
 ラグは低く笑った。
「言ったろ?シリンの燭台は高く売れた。食料を買ってもまだまだ残っている。代金は遺跡の誰にも分からないところに隠してある。レモのひとりくらいは買えるだろう。」
「抜け目がないな。」
「蛇の道は蛇だ。闇の世界をちったあ知ってたのも無意味じゃなかったな。妙なところで活かされた。じゃ、飯にするか。」
 そういってラグは背負って来た荷を下ろした。
 リウがお茶を入れた。
 ラグが目を丸くした。
「旨い。なんでこんなに旨いんだ?」
「入れる相手がいるからだ。」
 リウはすましてそう言った。
 イルは可笑しそうにくっくっくっと笑いをこらえた。
「レモはもうすぐここへ連れて来られるかな?」
 サリが固マムをかじりながら言った。
 ラグが答えた。
「ああ、エケネンは計算高い。いつまでもレモを無駄に手元に置いておくわけがない。」
2006.09.08 Friday * 12:48 | Story | comments(0) | trackbacks(0)
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