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2008.07.25 Friday * | - | - | -
* 44:大きなもの
 レモは足を鎖でつながれて、陽のささぬ地下奥のどんづまりの小部屋に閉じ込められた。
 エケネンはレモも信用していなかった。遠くへ売られることになった。
「エケネン。」
 アギがエケネンを振り返った。
「これはあんたが持ちな。さ、あたしが首にかけてやる。」
 アギは胸に手を入れて首から下げた玉石の入った袋を出し、エケネンの首にかけた。
「気に入らないのか?」
「いや。あんたの大事な人のゆかりのものなんだろ?だったらあんたが肌身離さず持っている方がいい。」
 エケネンは玉石を取り出してそれを灯りにかざした。
「俺はおまえにそんなことを言ったか?そいつは俺を捨てた女だ。俺は生まれてすぐにそいつに捨てられた。大事なわけじゃねえ。これは高価なものだ。それだけだ。おまえが要らないなら売って金にする。」
「よしな。だったらあたしが預かっておくよ。」
 そう言ってアギはそれをエケネンから取りあげた。

 リウは遺跡に辿り着いた。イルたちにも手伝ってもらわなければならない。
「すまねえ。レモは川にいたんだ。やっぱり捕まっちまったのか・・。」
 ラグは意気消沈していた。
「ラグたちを責めているんじゃない。今からのことだけ考えてくれ。」
「どうするんだ?」
「エケネンはさらに用心深くなるだろう。うかつには近づけない。リサイが言うにはたぶんレモは人買いに売られるんじゃないかってことだ。ただ殺すよりも金になる。なんとか遠くへやられる前に助けたい。だが、ちょっと気になることがある。」
「なんだ?」
「エケネンはエトナの玉石のことを昔縁のあった者のゆかりのものだと言ったそうだ。エケネンのそばにいるアギという女はそれをエケネンの大事な人だと言っている。それってどういう意味だ?」
「玉石はここの中心だと言ったな?」
 イルが考え込んだ。
「エトナに縁のある者なのか、エケネンは?縁があるといえばおまえだろう?」
 イルは顏を上げてリウを見た。
「なんのことだ?」
「おまえは遺跡のことを遺跡守のように知っていた。なぜだ?」
 リウは気がついた。
(あの少女なら知っているだろうか?)
「夢に出て来た少女の案内で遺跡に入れたんだ。会ったことはない。」
「それは遺跡守だ。だったら今は兄のくににいる。聞くことはできないのか?」
「こっちから聞くことはできない。最近は声も聞こえない。」
「声?」
「兄の声だ。聞いたことはないか?」
「ない。」
 ラグもサリも首を振った。
「どういう風に聞こえるの?」
「内側に響くんだ。まるで自分の内側から湧くように。だけど、わかる。それは兄の声だ。リサイも聞いた。だからオレを殺すのをやめたんだ。」
「だったらエケネンもその声が聞こえたらいいのにね。」
 サリがつぶやいた。
 リウはハッとした。
「ああ、ほんとだ・・。」

 遺跡は荒れ果てていた。少しでも金になりそうなものは壁だろうが床だろうが剥ぎ取られ、内宮も無惨にただの土くれとなっていた。
 天井が落ちて、星がまたたいているのが望める。
 リウは玉石を掘り起こした壁の穴に触れた。
(敵を倒して解決する物語ならどんなにいいだろう・・。誰かを憎んで切り捨てられればどんなに楽だろう・・。だけど、ほんとうは楽になんかならない。勝つことを求めてるんじゃない。その奥にあるものがもっと違うものを求めてやまないんだ。それが最後の心だ。それだけはなんとなくわかる・・。)
 瓦礫の上に腰を降ろした。
 星を見上げた。
(ここに祀られていたという・・兄を遣わした者って・・いったいなんだ?・・すべての始まりは遠い過去だ。世界の中心は今だ。世界を方向づける意志は・・未来だ。想像することすらできない・・。)
 漆黒の星空を見つめていると時を忘れた。
(なにかの意志が働いてるのか?星が動くのも。オレがここにいるのも。すべてがあるのも。)
 星が流れた。
(お願いだ。オレたちの最後の心を教えてくれ。オレが生まれたわけの通りに生かしてくれ。)
 リウは生まれてはじめて底知れぬ大きなものへと切実に祈った。
2006.09.07 Thursday * 12:43 | Story | comments(0) | trackbacks(0)
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