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2008.07.25 Friday * | - | - | -
* 42:毒
 さらにひと月が経った。
 相変わらず朝早くから黙々とリウは働いた。料理の腕を上げ、ウルの指図なしでも随分料理がこなせるようになってきた。
(このスウプはレモに教えてやろう。この発酵酒はラグが喜ぶだろうな・・。)
 だが、いつ帰るのかはリウ本人にも分からなかった。
 サシーは相変わらず陰気なまなざしでリウをやっかいもののように見つめる。
 エケネンもいつも冷たい目でリウを見ていた。決して心を許していないのをリウは感じていた。
 それなのにリウを追い出すこともしない。
 エケネンにとってリウはあごに刺さったトゲのような存在になっていた。気を許すことも無視することもできないのだ。
 そのことが何かを起こすことをリウは予感していた。

 いつもより遅い夕食のテーブルに食事を並べ始めた時だった。
 乱暴にドアが開かれてどやどやと帰って来た靴の音に混じって細い声が響いた。
「痛いよ!離してよ!」
(ハッ!)
 リウはドアの前に走った。
「ちきしょう。やっと見つけたぜ。」
 ケニがレモの腕をつかんで引きずっている。
「レモ!」
 ケニはリウをチラッと見て鼻で笑うと吐き捨てるように言った。
「今日からはここで働くんだ。今度逃げやがったらそれこそただじゃ済ませねえ。」
 床に投げ出されたレモを助け起こすと、リウは短く指図した。
「炊事場に行ってお茶の用意をしろ。すぐ行け。」
 泣きそうな顏をしていたレモはうなずくとリウが指差す方へと駆けていった。
 夜も更けて、レモの寝床を世話しながらリウは問うた。
「みんなは?」
「遺跡へ逃げた。でも、ぼくが逃げ込む前にケニに扉を壊されたんだ。もう森からあそこへは行けないよ。」
「そうか・・。」

 サシーは自分より小さな新入りのレモにあからさまにつらく当たった。
 レモの作るものに隠れてひどい味をつけ、エケネンに酒を持っていこうとするレモの足を引っ掛けて倒した。
 リウにはできなかったうっぷんを晴らすかのようだった。
 見兼ねてリウがレモをかばうと、今度はケニにリウとレモがケニの悪口を言っていると吹聴した。
 ケニがリウの顏を殴ったことを誰かに聞き込んで、またぞろケニの敵意に火をつけようとするかのようだった。
 それもあるのか、ケニのリウとレモを見る目は一層陰険になってきていた。
 レモは以前のおびえた目をするようになった。リウはささやいた。
「すきをみてお前を逃がしてやる。」
「だめさ。もうケニからは逃げられないよ。また捕まったら今度はもっとひどい目にあう。」
 
 それから幾日かした頃、ウルが血相を変えてマムを焼いていたリウのところへ駆け込んで来た。
「お前、ついにやったな!」
「なんのことだ?」
「エケネンに毒を盛ったのか!」
「なに!」
 その後ろからケニやリサイたちが5、6人でなだれ込んできて、リウを捕らえた。そして縛り上げた。
「ついにしっぽを捕まえたぜ。観念しな。」
「エケネンがどうしたんだ!」
 リウはウルの顏を見た。
「アギの部屋で発酵酒を飲んで苦しみ出した。アギが吐かせたからいのちは取り留めた。お前がやったと言ってる。」
「だれが!」
「レモだ。」
「なんだって!まさか!」
 リウは縛られたままアギの部屋へ連れていかれた。ベッドにはエケネンがアギに支えられて座っていた。
 その横にはダルに掴まれたレモが青くなって震えている。頬には殴られた痕があった。
「ぼく・・ぼく・・。」言葉にならない。
「・・やっぱりお前はオレを殺すためにここへ来たな?・・」
 リウを凍るような瞳で射ると、エケネンは低い声を響かせた。
 リウは叫んだ。
「どういうことだ!だれが毒なんか!レモ!いったいどうしたんだ!」
「ぼく知らないよ!ぼくじゃない!ぼくは持ってきただけだ!」
「もう一度聞く。リウに頼まれたんだな?」
 エケネンはレモを鋭くにらみつけ、低い声で念を押した。
 レモはすくんだようにぶるぶる震えて・・うなずいた。
「やれ。」
 エケネンが冷たく言い放つと、ケニが笑って短刀を抜いた。
 レモは泣きながら叫んだ。
「リウ!」
2006.09.05 Tuesday * 14:45 | Story | comments(0) | trackbacks(0)
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