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2008.07.25 Friday * | - | - | -
* 33:滝
 幾日かして、サリは日暮れ近くなってももどらなかった。ラグが心配し出した。
「どこへ行ったんだ?レモもいない。しかたないやつらだ。あれほど日暮れには帰れと言ってあるのに。」
「帰れなくなるとまずい。探しにいくしかないな。」とイル。
「そういや昨日、滝に行きたいと言ってたな。」
 ラグが言う。
「学問所の森の滝か?あんな街に近い場所で、レモがケニにでも見つかったらどうするんだ。」
 リウは不機嫌さをにじませながら、弓をとってマントをはおった。
 ラグはふたりがもどるかもしれないので残り、リウはイルと探しに出た。
 学問所に着いた頃には日が暮れてしまった。たいまつを起こして森に分け入る。
「レモの名は呼ぶな。万が一ケニに聞かれるとまずい。」
「サリー!」
「サリはいるかー!」
 ふたりは声をあげながら夜の森を行った。
「なんだって、ここに来たいと言ってたんだ?」
 リウはイルに問うた。
「さあ。オレは知らない。」
 森の奥の滝の音が響いてきた。
 水の音に混じって何か聞こえて来る。
「リウ・・!イル・・!」
「サリ!そこにいるのか!?」
 滝の裏側から声がする。
 イルが滝の上から木の根を伝って降りて行った。
「レモが足をくじいてる!」
 そう言ってレモを背負うとまた木の根をよじ登ってリウの元に上がって来た。
 もう一度降りるとイルは今度はサリを背負って登ってくる。
「なにやってるんだ!」
 リウはサリを叱った。
 その時、遠くに何頭かの馬の蹄の音を聞いた。
「しっ!」
 イルがそう言ってたいまつの火を消した。
「火が見られたかもしれない。こっちだ。」
 イルがレモを背負って逃げ出した。
 リウとサリも後を追った。
「あっちに火が見えたろう?」
「化け物じゃないのか?」
「確かめてやる。」
 そう言って品悪く笑う声が風に乗って聞こえてくる。
「ケニだ!」
 サリが転んだ。
「急げ!」
「待って!落としちゃった!」
「いいから来い!」
「だめ!やっと見つけたんだ!」
 リウはそう言って引き返そうとするサリの頭をうむを言わせずはたくと、その手をつかんで走った。
「子供の声がしなかったか?」
 ケニたちの声がした。
 サリはまた転ぶ。今度はひどい転び方をしてすぐに立てない。
 リウは舌打ちをすると、背負っていた弓をすばやく抜いて、息を深く吸った。
 体の痛みにいらだってサリに当たったことを見た。サリのことをお荷物に思っている今の自分を見た。全部背負って引き受けたうえで踏み止まる覚悟を決めた。こころが鎮まった。
 弓は虚空に放たれた。
 ケニの声があがった。
「わーっ!」
「あわてるな!刺さってるのは服だ。」
 仲間が叫んで剣を抜いてあたりをうかがった。
 ケニは服のそでに刺さった矢で樹に射抜かれて身動きができないでいた。
 リウはサリをもう一度助け起こして走った。
 イルがケニたちの乗ってきた馬の1頭にレモを乗せてまたがっていた。
 リウは他の馬の尻をたたいて逃がし、1頭にサリを乗せてそれに自分も飛び乗った。
 2頭の馬はいなないて走り出した。
 イスキニの森の近くで4人は馬を降り、思い切り馬の尻をたたいて遠くへ追い払った。
 ラグが心配気に駆け寄ってきた。
「いったいどうしたんだ?心配したぞ。」
「やっぱり学問所の森にいた。」
「どうしてまた。」
 レモが答えた。
「サリが、リウの痛みに効くものはないかっていうから、滝のそばに生えてるペマってきのこを摘みにいったんだ。でもなくて探しまわって、やっと見つけたとこでぼくが足をくじいちゃって・・。」
「・・そうだったのか・・。」
 リウは声を落とした。
 サリは顏を赤くして恥ずかしそうに笑った。
「でも、やっと見つけたのに落っことしちゃったよ。ぼくってドジだよね。」
「悪かった・・。」
 そういってリウはサリを抱き寄せた。
2006.08.27 Sunday * 19:50 | Story | comments(0) | trackbacks(0)
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2008.07.25 Friday * 19:50 | - | - | -
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