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2008.07.25 Friday * | - | - | -
* 31:聖跡
 らせんの坂を駆け登り、下にいるエケネンたちに気づかれないように反対側に降りた。
 いつもより多い2、30人で壁を崩す丸太まで運んできていた。大掛かりだ。
 リウはぐるっと廻りこんでなにくわぬ顔をしてみなの後ろについた。
 が、その時、リウの首根っこを掴んで後ろに引き倒した者がいた。
「貴様、ここで会ったが百年目だ!」
 ケニだ。
「何してやがる。」
 ダルが面倒くさそうにこっちを見た。
「こいつには貸しがあるんで。」
「早く済ませろよ。これから仕事だ。」
 リサイがニヤリと笑いながら横を過ぎていく。
 リウは起き上がった。全身に注意を払ってケニの動きを見た。
 太い腕で殴りかかってきたのをかろうじて避けて、遺跡に飛びついてその壁面をよじ登った。図体がでかいのでケニは登れない。
 斜面を走って反対側にまわった。
(やっかいだな。だけど、あいつがエケネンのところにこないわけがなかった・・。)
 遺跡のそばに生える1本の柳水木の木に飛び移った。身軽にするすると梢の上の方にまで登り切ると、さらさらと繁る葉の影からうかがった。
 ケニはリウの姿が見えずにウロウロと探し廻っている。
 そこへイルがやってきてあさっての方を指差し、ケニに何かを言うのが見えた。
 ケニは歯をむきながらその指差した方へと突進していった。
 イルがこっちを見て手招きしている。
 リウは木から滑るようにすばやく降り立った。
「ラグたちは?」
「だいじょうぶだ。知らせておいた。イル、聞いてくれ。」
 疲れた顔をしたイルは黙って首を傾げた。
「イスキニの森を覚えているか?」
「え・・。」
「頼むから信じてみてくれ。あれはたしかに通じている。今、ラグたちはあそこにいる。ラグがイルにもどってくれと言ってる。イルが信じればあそこへ行ける。そうでなければあそこは閉ざされる。エケネンたちは行けないだろう。」
 イルのどんよりとした瞳が物言いたげに揺れた。
「いい!森が信じられなくても、オレを信じろ!オレが行くところに来い!」
 その時、遺跡の壁が突き破られて、ガラガラと瓦礫がくずれる音がした。
 リウとイルは中へとなだれ込む男どもに紛れてらせん下の広間に突入した。みな四方八方あちこちへと散っていく。リウたちは例の扉へ走った。
 バーン!
 扉を開いてリウは目を疑った。部屋だ!
「イル!」
 振り返って叫んだリウの目に、イルの後ろに息をはずませてこっちをにらんでいるケニの顔が、飛び込んで来た。
「チクショウ!お前もグルか?今度という今度は許さねえ!カタつけてやる!」
 リウはとっさに肩に背負った弓をとろうとした。その時、何かを落とした。
 コーン。
 それは明かり取りの小さな穴から差し込む光にキラキラ輝きながら床を転がった。
(あっ!玉石が!)
 同時に響き渡る『声』。
[たたけばたたきかえされる]
 リウは雷に打たれたように、つかんだ弓をにぎりしめたまま棒立ちになった。
「リウ!」
 イルが止める間もなく、ケニはリウを全身で蹴り上げた。
 なんとか止めようとするイルも殴りつけ、床に伸びたふたりを何度も何度も足で踏みつけた。
 そして顔の形が変わるくらいリウの顔を殴り上げると、さすがに疲れたのかふらついた足取りで部屋を出ていった。
 部屋に静寂が訪れた。
 イルがかろうじて起き上がると、リウを抱き起こす。血に染まったリウの顔は、誰だか見分けがつかなくなっていた。
「リウ!済まない!オレが信じられなかったばっかりに・・・」
「・・」
 リウが何か言っている。
 イルは耳をあてた。
「・・イルの・・せいじゃない・・。ケニが・・一緒だったから・・森は・・」
「もうしゃべるな。」
 イルは泣いた。

「見守るだって!そんな残酷なことがあるか!まだオレが殴られた方がいい!どうしてあのことを言った?たたかえばリウならしのげた。」
 エカは首を振った。
「イナ・・イナ。落ち着いて。わたしが言わなくてもあなたが言ったはずよ。どうしてもくぐらなくてはならないリウの聖跡なの。あなたもそれに耐えなければ・・。リウを信じて。ひとが思うほど、いのちは儚くはないわ。」
2006.08.25 Friday * 14:14 | Story | comments(0) | trackbacks(0)
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