* スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

2008.07.25 Friday * | - | - | -
* 30:矢
 ラグが問う。
「イルはどうした?」
 リウの顔が曇った。
「酒を飲んで寝込んでしまって一緒に来れなかった。だが、エケネンたちと午後にはここへ来るだろう。」
「お前少し変わったな・・。」
「そうか?」
「エケネンの仕事を手伝っているんだろう?」
「ああ。」
「色に染まるなよ。」
「・・。」
「お前のいいところはおれに言わせりゃまっすぐに燃え上がる炎のようなところだ。お前の目に今それがない。少なくとも見えない。」
「わかってる。」
「イルが来たらもうエケネンの元にやるな。酒に溺れるこわさはおれがよく知ってる。」
「ああ。」

 リウは疲れたからだを引きずるようにしていって泉の淵にしゃがんだ。
「ララ・・。」
[どうした。]
「いろいろあった。」
[これからだろう。]
「・・ああ。そうだ。」
[疑っているのか?」
「何を?」
[最後の心だ。]
 リウはギクリとして立ち上がった。
「そうなのか?オレは・・。」
[自分の心を見ないのか?自分の心を見ないでどうやって最後の心を探せるんだ?]
「少し、疲れたんだ・・。」
[疑うから疲れる。うまくやろうとして自分を殺す。ほら。見たな。それが今のお前の心だ。]
「こんなことが続くのか?何になる?ちっぽけなオレのささいな行動で何が変わる?誰かひとりが敵なんじゃない。みんなで雪崩れ込もうとしている。あの闇へ。そうだろう?」
[闇を見なれば本当の光は見えない。]
 ララは答えた。
 リウは思い出した。
(カリフ先生・・。)
『闇をおそれて目を閉じるな。おそれているという自分を見るんだ。』
 リウはここに運んでおいた自分の弓を探し出した。
 引き絞って引いた。何度も何度も何度も。たたみかけるように何度も。
 大きな闇が目の前にひろがった。だが引いた。それでも引いた。おそれている自分を見逃さなかった。
 一瞬一瞬、目をそらし、引き下がりたくなる心が湧いた。それも見逃さなかった。そしておそれながら耐えた。一歩も引かなかった。
すると引き絞っている自分を忘れた。
 ターン!
 1本の矢がまっすぐにはるかかなたの樹木に突き立った。
 その時、遺跡の壁に穴を開けようとする大きな振動が伝わって来た。
(はっ!)
「もう来たか!」
 リウは弓と矢を背負うとラグたちに叫んだ。
「ここから出るな!イルを連れて来る。」
2006.08.24 Thursday * 13:43 | Story | comments(0) | trackbacks(0)
* スポンサーサイト
2008.07.25 Friday * 13:43 | - | - | -
Comment









Trackback URL
http://final-heart.jugem.jp/trackback/31
<< 29:玉石 | main | 31:聖跡 >>