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2008.07.25 Friday * | - | - | -
* 29:玉石
 火のはぜる音で目が覚めた。
 寒気がして頭がガンガンする。熱が出ているのかもしれない。うっすらと開いた目の端に人影が映った。
「ラグか・・?」
 その人物は大きくからだを揺らしながら歩く。少しからだが不自由なようだ。ラグじゃない。
 湯気の立ったカップを手にしてリウのところにやってきてひざまずいた。
 そっとリウの頭を助け起こし、湯を飲ませてくれようとする。
 湯気の向こうの顔ははっきりと見えなかった。だが、飲み終えたカップをテーブルに置こうとした横顔を見て、リウは血の気が引いた。
「父さん?」
 だが、男はなんの反応もない表情でこっちを見ている。
「父さんだ!父さんだろ!?」
 リウは寝ていた粗末なベッドから転がり落ちた。
「父さんじゃないか!?」
 男にすがる。
 だが男は無表情にその手を払い除ける。
「オレだ!リウだ!わからないのか?」
 リウがさらに必死になって迫ると、男はおびえたような瞳になってうなり、思うように動けないリウを担ぎ上げると風が吹きすさぶ外に出た。
 そして砂嵐の中をしばらく歩くと、岩影にリウを置き捨てるようにして去っていってしまった。
 リウは気分がわるくなってそのままそこでふたたび意識を失った。

「おい!リウ!リウ!だいじょうぶか!」
 今度はラグの声で目が覚めた。
 砂嵐は去って、夜が明けようとしていた。
「オレは・・?」
「驚いた。夜の砂漠を越えてきたのか?オレが通りかからなかったらどうするつもりだったんだ。」
 ラグに担がれながらリウはめまいがしていた。
「・・父さんは?・・」
「なんだって?どうした。だいじょうぶか?」
 遺跡に着くとらせんの坂を下った入り口の広間でラグはいったんリウを降ろした。
「リウ!」
 サリとレモが駆け寄ってきた。
「どうしたの?だいじょうぶ?」
「・・エケネンたちが来る。知らせにきた。遺跡を荒らしに来るんだ。」
「なんだって?どうする?」
「ラグ、ラグ、聞いてくれ。」
 リウはラグにつかまって上半身を起こした。
「前にイスキニの森を見たろう?」
「ああ。」
「あれは本当につながっている。ラグがそう信じてくれればつながる。あれは信じないものにはつながらない。だから信じてくれ。あそこへ逃げ込めばエケネンたちから逃れることができる。」
 リウのせっぱつまった様子に気圧されて、ラグは素直にうなずいた。
「わかった。よくはわからないが信じればいいんだな?」
「よし、サリもレモもあの部屋に行け。いいと言うまでそこにいるんだ。」
「リウは?」
「オレは内宮を見て来る。」
 そう言うとリウはふらつきながら立ち上がった。さっとサリが支えた。
「一緒に行くよ。」
 リウはちょっと笑むとうなずいた。
「レモはラグの心を支えてくれ。あとからすぐ行く。」
「内宮の何を見るの?」
「燭台やら色々だ。できれば盗られたくない。」
 再びどっしりとした美しい扉を押した。
 前に入った時に気がつかなかったが、祭壇の上に立派な燭台があった。
「このことか?よし、持っていこう。他になにか持っていけるものはないか?」
[燭台は置き、玉石を持て]
「えっ?」
 声だ。
「どこにある?」
[正面の壁]
 たしかにそこにはてのひらに入るくらいの晶石の玉が壁に埋め込まれている。
「これか?」
[聖エトナの中心]
「何か掘るものを・・。」
 見回して何もないと見てとると、リウは燭台を手に取ってそれを壁に打ちつけ始めた。
「くそっ!固いな!」
「間に合うかな?」
「大丈夫だ。やつらは早くて午後だ。」
 カーンカーンと乾いた音が響いた。
「とれた!」
 玉石をにぎりしめるとリウはサリと小走りにあの奥の部屋に向かった。
「ラグ!」
 飛び込むと部屋の向こうはイスキニの森だった。
「よかった!」
 扉を閉める。
 まるで何もなかったかのように、鳥がさえずり、青空が広がっていた。
2006.08.23 Wednesday * 13:37 | Story | comments(0) | trackbacks(0)
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