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2008.07.25 Friday * | - | - | -
* 28:砂漠
 リウたちはひと月も経つとやっていることに慣れてきた。
 初めは盗ったものの中から気づかれない程度に抜き取ってもどしていたが、エケネンの目が光るようになってそれもできなくなった。
 やがて街中のものはエケネンの財となり、あちこちでのいさかいでのし上がったエケネンの盗賊団は、街の外へもその手を伸ばしていった。
 馬に乗って街境から見下ろすと、街はよどんだ空気に沈んでいる。
(ペキニの街・・。)
 外へ遠征して帰って来る度にリウはペキニの街の光景に心がうずいた。
 リウはその瞳から自分で紅い色を鎮め、つとめて目立たなくしていた。だが、心配なのはイルだった。
 ひと月前に励ましてくれたイルは、澱のように溜まってくる『冷え』に、瞳の色を汚されてきていた。
 ここ2、3日は酒をよく飲んでいる。
「イル。遺跡にもどれ。飲み過ぎだ。」
「遺跡にもどってどうする?あそこだって何もない。こうして生きていくしかない・・。」
「おう、遺跡がどうしたって?」
 そこへリサイが割って入った。
「いや、別に・・。」
「明日は遺跡に行くって話だろ?」
「えっ?そうなのか?」
「聞いてないのか?」
「ああ。だって遺跡には何もないだろう?砂漠も越えて行かなきゃならない。だったらタスチフに遠征した方がいい。」
「あるんだよ。あそこにも。お宝がな。」
「えっ?」
「こないだな、北の商人が言ってたそうだ。あそこの内宮の祭壇にある燭台を北の王が高く買うと言ってるとな。だいたい内宮にある玉石っていう石がそもそも高い代物らしい。他にも探しゃあ色々あるだろう。壁の彫刻をはがしたっていい。」

 リウはその晩、馬を走らせた。夜に砂漠を越えるものは呪われると聞いたことがあるが、構っていられなかった。
 砂漠は馬で越えられない。そこからは徒歩で前へ進む。夜半過ぎから風が出て砂が舞い、目印の星をかき消し始めた。
 這うようにリウは前へと進んだ。進んでも進んでも何も見えなかった。
(おかしい・・。まだオアシスが見えない。どうしたんだ。迷ったのか?)
 吹きつける風で息が苦しい。
 風に混じってかすかに低い笑い声が聞こえる。
(空耳だ。そんなものは信じない!)
 それでも今度は人の断末魔のような悲鳴のようなものが聞こえてきた時にはさすがにリウの背筋は凍りついた。
(うそだ。惑わす幻聴だ・・。)
 だが、骨まで冷やす夜の風は、リウの体温を奪っていく。
(もうすぐだ。もうすぐなんだ・・。)
 その時、ふっと砂嵐が晴れた。
 リウは見た事のない崖が目の前に立ちはだかっているのを目にして、ついに力が尽きた。
(なんてことだ・・ここは・・どこだ・・。)
[・・リウ!・・リウ!]
 内に響く『声』を聞きながら、リウの意識は遠のいていった。
2006.08.22 Tuesday * 11:39 | Story | comments(0) | trackbacks(0)
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