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2008.07.25 Friday * | - | - | -
* 20:エケネン
 リウたちは坂道を上ってリウの家にたどりついた。だが、家の様子がおかしいのに気がついた。
「扉が壊されてるよ!」
 駆け込むと、家の中は荒らされていた。
「ケニが来たのかな?」
「いや、誰が来てもおかしくないんだ。」
 そういいながら、リウは銀貨の入った壷を探したがなかった。手に入れたばかりの麦粉もなかった。
 舌打ちしたが、すぐに切り替えてふたりに言った。
「いつまた襲ってくるかわからない。持っていけるものは持って、家を出よう。」
 リウは寒さしのぎのマントと、弓を持った。サリは毛布とわずかに残ったチーズなどの食料を。レモは持っていけそうな小ぶりの鍋を手にした。
「どこに行くの?」
「ひとまず司祭宮のイルたちのところだ。」
「角ヤギは?」
「しかたがない、柵を開けてみんな放していこう。」
 思ったより事態は早かったな、そうリウは思いながら、坂の途中で振り返った。父さんと母さんと暮らした家と別れることになった。 
 もう、もどれないかもしれない、と思った。とにかく、前へ進むしかない。
 陽が高くなると、街は騒がしさを増していた。足の遅いサリやレモを待ちながら、路地から路地へ、走った。
 ガチャーンとグラスの割れる音がすぐそばで響いた。
 何人かが織物屋の窓を割って品物を盗もうとしている。
「リサイ!」
 リウは目を止めて思わず叫んだ。
 ここの店では母さんが作った織物も売られている。
「何してるんだ!」
「リウか。ここの店主がいなくなったんで、替わりに売りさばいてやろうとしてるんだよ。」
「やめろ!それは盗みだぞ!」
「今、この街には何をしようが止めるものはねえんだよ。」
「カリフに恥ずかしくないのか?」
「・・・。」
 リサイは一瞬黙ったが、投げ捨てるように言った。
「カリフだっていなくなっちまったじゃねえか!いなくなっちまうやつのことなんか知るか!」
「いなくなったワケじゃない!おまえは聞こえないのか?」
 そう言ってリウはリサイの腕をつかんだ。
「何が?」
 そう言われてリウは答えに窮し、眉を寄せるとつかんだ腕を離した。
「リサイ、済んだか?」
 太い声がした。.
 振り返ると、黒髪のひげ面の大きな男が音もなく後ろに立っていた。
 目が鋭く、とてつもなく暗くぞっとする。
「すみません、今やりますんで。」
 急にリサイの態度が変わった。この男の下にいることが分かった。
「あんた、誰?」
「失礼な口、きくな!この街はこの人が牛耳るんだからな。覚えとけ、エケネンの名を忘れるな!」
 リサイが小声で口走ってリウを突き飛ばした。
(エケネン・・。)
 その名を刻むと身をひるがえし、リウは路地で心配そうに見守るサリとレモのところへ走った。
「行くぞ!」
2006.08.14 Monday * 09:16 | Story | comments(0) | trackbacks(0)
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