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2008.07.25 Friday * | - | - | -
* 19:エカ
 その朝、目覚めるとイナは胸騒ぎがした。
 朝食もとらずに家を飛び出した。
「リウ!」
 リウの家に着くと、静かな家の中に、いつもなら機織り所に行っているはずのタリが座り込んでいるのが目に飛び込んで来た。
「リウは?」
 タリは首を振った。
「来たのか!地滑りか!」
 タリはうなずく。
 司祭宮へ走った。とにかくじっとしていられなかった。
 街は人が少なかった。
 イナは司祭宮へ駆け込むと、司祭を見つけて頼んだ。
「オーネン司祭に会わせてください。お願いです。」
 だが、司祭はすまなそうに首を振った。
「今、そういう者が殺到しておる。すぐには無理だ。」
「なんとかなりませんか?」
 司祭は足早に奥へと去ってしまった。
 もうひとり通りかかった司祭をつかまえてみるが、やはりとりつくしまもない。
 じりじりとしていてもたってもいられない様子をマントを羽織った黒髪のひとりの少女が見ていた。
 イナと同じくらいの年頃のその少女は、静かにそばに寄ってきて、小さいが落ち着いた声でイナに声をかけた。
「わたしはこれからオーネン司祭にお会いすることになっていますが、一緒に来ますか?」
 イナの顔はぱっと輝いた。
「ぜひ!お願いします!」
「わたしの名はエカといいます。」
「イナです。見かけないお顔ですが?」
「聖エトナの遺跡から来ました。」
「遺跡守なのですか?」
「はい。」
 遺跡を守る女性は代々つづく家柄で、街にやってくることはめったにない。
「やはり、地滑りのことで?」
「ええ。お召しにより。」
 また別の司祭がやってきて、エカを案内した。イナも続く。
「お身内が滑られましたか?」
「ええ。いとこなのですが・・。わかってはいたけれど、じっとしていられない。」
 エカはうなずいた。
『内なる回廊』を巡り、『清めの間』に出た。オーネンが待っていた。
「よくきた。エカ。そなたは・・、」
「イナです。」
 オーネンはうなずくと、
「リウのことだな。」
 と応えた。
 自分たちのことを覚えていてくれたことにイナは驚いた。
「それでエカを呼んだのだ。」
 エカとイナは同時に小さく声をあげた。
「えっ?」
「偶然に会ったと思うか、まあいい。今、聞いたな、エカ。」
「はい。」
「そなたのたましいの双子のことだ。」
「リウですね。」
「見えたか?」
「はい。」
「どういうことですか?」
 イナは面喰らって問うた。
「エカは血はつながっておらぬが、リウとたましいの縁を持っておる。リウに会った時にわたしにはすぐ分かった。エカと地続きであるということは、リウには務めがある。エカにはそれを見守ってもらう。そして、それをイナ、そなたにも見守ってもらいたい。」
「もちろん!喜んで!」
2006.08.13 Sunday * 08:26 | Story | comments(0) | trackbacks(0)
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