* スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

2008.07.25 Friday * | - | - | -
* 18:内なる回廊
 鍵を手にしてリウはしばらく躊躇したが、満月に近い月をもう一度見上げて意を決すると、内なる回廊の扉の前に立った。
 鍵を差し込む音が響く。重い音を立てて扉は開いた。真っ暗闇が広がる。
 一瞬夜空の中に放り出されたような頼りない感じがして、引き下がりたかったが、振り切った。
 たったひとりでこの闇の中を行くのは初めてだ。ひとりなのに誰かがいるような気もして時々背筋が寒くなる。
 ぼうっと浮かび上がる白い柱を頼りに、下り坂を進んでいく。行けども行けどもたどりつけないような気がしてきて、恐怖感は増してきた。そこへ、頬をかすめて黒い固まりが突進してくる。
「うわあっ!」
 羽ばたき音が聞こえて、暗闇に棲む夜鳥であることがわかった。
 だが、あまりにも驚いたので前にも後ろにも進めず、固まってしまった。息が荒い。心臓の鼓動が壁まで響くようだ。
 自分がこんなにも気が弱いということを初めて経験していた。
(もう進めない!)
[だいじょうぶ]
(!)
 また、『あれ』だ。かすかに、でもたしかに聞こえた。
(だいじょうぶだって?)
 応答はない。
(行ける?行けるってことだな?だいじょうぶなんだ。だいじょうぶだ。)
 足が動いた。息が落ち着いてきた。
「ひとりじゃない。ひとりじゃないんだ・・。」
 つぶやいて冷や汗をかきながら、そろそろと進んだ。
 以前灯が点されていたところに灯はなかった。真っ暗な闇が底なしに口を開けているようなはしごのところに来た。
[その先の光]
 恐怖に吸い込まれそうになるリウのこころを導くように、その言葉が響く。
「闇の先の光・・闇の先の光・・」
 呪文のように唱えながら、足で一段ずつ探ってしがみつくように降りた。灯りもないのでほんとうに奈落の底へ降りてゆくようだ。足を踏み外せばまっさかさまだ。
 何度同じ作業を繰返したか分からなくなった頃、とんと足先が地面に着いた。
「着いた!」
 全身で金属の扉を圧した。
 真夜中なのに神々しい光がもれた。
 闇に慣れた目はしばらく開くことができなかった。
 うっすらと開いた目に飛び込んできたのは、以前と変わらない美しい丸天井、澄み切った聖水。
 リウの目に涙がにじんだ。
 聖水に手を浸し、涙に濡れた顔を洗った。

 翌朝、あから顔のラグはみんなのために司祭宮の台所で金精鳥の卵を茹でてくれた。
 そして、リウに言った。
「言霊は最後の心を知る者が唱えるだろうとオーネン様は言っておられた。とすれば『永遠の光』は今もあそこにあるのかもしれねえな。考えてみればそいつが現われるなら、この世は捨てたもんじゃないってことよ。あんたが永遠の光を見たいって言ったとイルに聞いて、思い出したぜ。」
「そいつって、あんたかもしれないよ。」
 リウはそう言って、ラグを笑わせた。

 ふたりが回復したことを見届けると、3人は家へもどることにした。
「『永遠の光』は見れなかったけど、行ってよかったね。ぼくらが行かなかったら、ラグもイルも死んじゃうところだった。」
 サリが言った。
 リウもうなずきながら、あの『内なる回廊』を思い出していた。
([だいじょうぶ]、だ。やっていくさ。イナ、もしかしたら、おまえか・・?)
2006.08.12 Saturday * 08:05 | Story | comments(0) | trackbacks(0)
* スポンサーサイト
2008.07.25 Friday * 08:05 | - | - | -
Comment









Trackback URL
http://final-heart.jugem.jp/trackback/18
<< 17:親子 | main | 19:エカ >>