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2008.07.25 Friday * | - | - | -
* 17:親子
 陽も傾きかけて、若い方の白髪頭が目を覚ました。
「頭が痛い・・。」
「まだ毒が残ってるんだ。だけどあらかた吐いたから大丈夫さ。どうして死のうとしたんだ?」
 リウたち3人に気がつくと、イルはため息をついた。
「父さんを独りで死なせたくなかったんだ。」
「父さんの方はなんで死のうとしたんだ?」
「街を見たか?」
 3人はうなずいた。
「父さんは絶望したんだ。元々飲んだくれでどうしようもない親父だったけれど、オーネン司祭に拾われてここで働いて、やっと立ち直ったところだった。その唯一の突っかえ棒がとっぱらわれちまったんだ。」
「『永遠の光』はここにあるのか?」
 リウは聞いた。
「さあな。」
「見てないのか?」
「塔に昇ってない。」
「なんだ。じゃ、簡単に絶望するな。」
 そう言って立ち上がると、イルの目をまっすぐ見て尋ねた。
「鍵のありかを教えてくれ。『永遠の光』を確かめてくる。」
「だめさ。」
「なぜ?」
「鍵はあっても、最後の扉は言霊(ことだま)がなければ入れない。」
 リウはオーネンが牛牙の扉の前で何かを唱えていたのを思い出した。ため息をつくと、しかたなくひざを折って座り直した。
「光が変わらず、あると思うのか?」
 イルが聞き返して来た。
「わからない。」
「あったとしてもどうだっていうんだ。状況は変わらないぜ。」
「地滑りが起きても変わらないものを確かめたかったんだ。でなければどうやってこれを超えてゆけっていうんだ。」
 少し、語気が荒くなった。
 父親の方が息を吹き返した。
「父さん!」
「イル・・ここはどこだ?オレたちは死んだのか?」
「生きてるよ。起きてくれ。」
「なんだ、生きているのか・・。」
 イルがリウを見た。
「オレはリウだ。こっちはレモ。そっちはサリだ。」
「リウたちが助けてくれた。大丈夫か?」
「よけいなことを・・。」
「オーネン司祭のそばにずっといたのに、どうして死のうなんて思うの?司祭に怒られるよ。」
 サリが言った。
「ちび野郎。黙れ。」
「ちびじゃないよ。サリだよ。」
 レモがあたたかいお茶を入れて来た。ゆっくりとふたりの口に流し込む。
 あから顔の親父の目から涙がひとすじ伝った。
 その晩は司祭宮に泊まった。講議台を運んで鍵の壊れた扉の前に置き、開かないようにした。
 夜の中庭を見つめながら、リウはやはり眠れなかった。月の光が差し込む庭は相変わらず美しかった。
「眠れないのか?」
 イルが声をかけてきた。
「もういいのか?」
「ああ。」
 そう言ってイルは中庭を取り囲む柱にもたれた。
「ひとつ、言い忘れたことがあった。」
「なんだ?」
「塔には昇ってないが、泉には降りた。」
「清めの間か?」
「泉は変わってない。」
 それだけ言って、リウに鍵を手渡すと、イルは父のいる部屋へともどっていった。
 不器用な親子のせいいっぱいの礼の気持ちなのだと、リウには分かった。
2006.08.11 Friday * 13:03 | Story | comments(0) | trackbacks(0)
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2008.07.25 Friday * 13:03 | - | - | -
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