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2008.07.25 Friday * | - | - | -
* 15:声
 その時、戸をたたく音がした。ハッと一斉にみんな緊張した。
「誰?」サリが問うが返事がない。
 リウはふたりに目配せして部屋の隅に下がらせると、かまどの脇に置いてあったこん棒を手にして扉に近づいた。
「誰だ?」
 小窓からのぞく。
「ケニだ。レモ、寝室に隠れていろ。」
 小声でレモに告げ、隠れたのを見届けると、こん棒を後ろに隠して扉を開いた。
「なんだ?」
「よう。お前んちにうちのレモが遊びに行ってるってきいてよう。迎えにきた。」
 それには答えず、リウは言った。
「地滑りが起きたのを知っているか?」
「別に、それがどうした?目障りなヤツが減っていいじゃねえか。何も変わらねえよ。」
「どうしてレモを探しているんだ?別にかわいがっちゃいないだろう?」
「あいつがいないとめしが食えねえだろ。2年も面倒みてやってんのに恩知らずなヤツだ。なんのために引き取ってやったと思ってやがる。」
「帰れ。」
「なんだと?」
「帰れと言ってる。二度とここへ来るな。」
「何なまいき言ってやがる。つべこべ言わずにレモを出せ。」
「二度とここへ来たくなくなるようにしてやろうか?」
「なに〜!」
 ケニがリウの胸ぐらをつかもうとしたのと、リウが瞬時にケニの後ろに廻りこんでこん棒を振り下ろしたのが一緒だった。
「いてててて!」
 わざと急所をはずした。かろうじて帰れるように。
「なにしやがる!」
 頭に来たケニが逆襲しようとしたところを、今度はのどを突く一歩手前で止めた。
「帰れなくしてやってもいいんだぞ。」
 リウの凄みに気圧されて、図体の大きいケニもさすがに色を失って、腰くだけになりながら、足を引きずって離れていった。
「これで済むと思うなよ!」
 負け犬の遠ぼえを残しながら、ケニは坂を下っていった。
「リウ、すごい!これでもう来ないかな?」
 扉の陰で見ていたサリが歓声をあげた。
「さあ、そうもいかないだろうな。」
 今は準備があって、奇襲ができた。だが、次は思いやられる。
 おそるおそる顔を出したレモは顔の色を失っていた。
「リウ、ぼくここにいちゃいけないんじゃ・・。」
 リウは決意した瞳でまっすぐレモを見て言った。
「お前はここにいろ。ケニのところへなんか行かせない。オレはケニが許せない。」
 その時、持っていたこん棒が手を滑り、音を立てて落ちた。こん棒は坂を下りだした。
 追いかけようとしたリウの胸にふいに言葉が浮かんだ。
[たたけばたたきかえされる]
 ハッとして立ち止まって、リウはこん棒が転がっていくのを見送った。
(なんだ?なんだって?)
 呆然と棒を見送っているリウを不審に思いながら、サリは追いかけて拾い上げた。
「どうかした?」
「いや、なんでもない・・。」

 昨日の晩がまるでずいぶん遠い日の過去のことのようだ。ふたりが寝静まった夜更け、リウはなかなか寝つけなかった。
(たたけばたたきかえされる。そしてまたたたけばまたたたきかえされる・・。)
 寝返りを打った。
(だけど、そうでないなら、どういう道があるんだ?たたかれるのを永遠に逃げまどうのか?)
 寝台の上に起き上がった。
(そうじゃないだろう?教えてくれ。さっきの言葉は兄の言葉なんじゃないか?もしかしたら、そうでない道があって、その先に最後の心があるっていうのか?)
 天窓にこぼれる星に問うた。
 なんの言葉も降ってこなかった。
2006.08.09 Wednesday * 18:07 | Story | comments(0) | trackbacks(0)
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2008.07.25 Friday * 18:07 | - | - | -
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