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2008.07.25 Friday * | - | - | -
* 12:タリ
 帰り道、リウは言葉少なくイナとサリと歩きながら、分かれ道に来て言った。
「たとえ、分かれてもひとつなんだな。」
「ああ。」
「オレにできるだろうか?」
 イナはにこっと笑った。
「おまえならできるさ。オレはずっとそう思ってきた。だからオレはおまえを守ってきたんだ。」
 意外な言葉をきいてリウは目を丸くした。
「どういうことだ?」
「さあ、知らない。だけど、そうしなきゃと思ったんだ。おまえがもし、目の前で『永遠の光』を吹き消されそうになったらどうする?」
「防ぐ。」
「それといっしょだ。」
「・・・。」

「じゃあな。」
 と別れて、リウはひとり家路についた。
 丘をひとつ登ると眼下にリウの家が目に入ってくる。
(オレもいつもそうだった。)
 リウは意外な自分のこころを見つけた。
(オレの中の何か小さな火を消しちゃいけないと思っていつもあせっていた。そして逆にでかい炎にしてしまっていたんだ。)
(カリフ先生・・。オレは弓をやるよ。そうしたら、最後の心も見つかるかい?)
 午後の陽が陰るまで、リウは牧で弓を練習した。
 タリが機織り所からもどってきた。
 夕食のテーブルをはさんで、タリはよくしゃべった。
「今年は緑桃がよく実ったとジニが言っていた。明日持ってきてくれるだろう。黒糖に漬けて冬に備えよう。去年は足りなかったから、多めに漬けないとね。リウ、明日は角ヤギの毛を剃るから早く帰ってくるんだよ。おまえに新しい上着を織ってやるからね。」
 いつもよりよくしゃべるタリの顔をリウは見つめていた。
 ナタイモのスウプをすすりながら話に相づちを打った。母さんの得意料理だ。
 冬を一緒に過ごせないかもしれないことはふたりとも分かっていた。だからこそ、そんな話がしたかったのだ。
 寝床についてリウは灯りを消すと、天窓の星を見上げた。
 何万、何億の心が湧くとオーネンは言った。では今、頬を一筋伝うものを流すのはどういう心だ?
 だけど、時は止められないのだ。
 その奥を束ねる最後の心を探すのだ。
 やがてリウは潮が満ちるような眠りへと誘われ、その淵へとまっさかさまに落ちていった。
2006.08.06 Sunday * 10:34 | Story | comments(0) | trackbacks(0)
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2008.07.25 Friday * 10:34 | - | - | -
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